SEEPS 環境経済・政策学会

環境論壇:「自然資本と生態系」についての投稿の呼びかけ

2016年4月12日

佐藤真行
柘植隆宏(編集委員)
栗山浩一(編集委員長)

 第9巻第2号の環境論壇のテーマは、「自然資本と生態系」です。

 ミレニアム生態系評価から15年余りがたち、生態系に関する自然科学的メカニズムの研究だけでなく、非利用価値の経済評価を含めて、生態系価値の再検討や評価に関する経済学的研究が世界的・国内的に蓄積されてきました。とりわけ、名古屋市においてCOP10が開催されたころから、TEEB報告書に代表されるような生物多様性と生態系サービスに関する環境経済・政策研究は急増しています。それに加えて、自然資本として環境・資源・生態系を包括的に捉えて、持続可能な発展論や生活の質(Quality of Life)あるいは主観的福祉(Subjective Well-being)、さらには持続可能な発展との関連について分析する研究も進んでいます。

 本誌第7巻第1号(2014年3月)の環境論壇では、「生物多様性の保全と持続可能な利用―自然共生社会の実現に向けて―」をテーマとして活発な議論が交わされましたが、その後の研究進捗も著しい速さで進んでいます。そこでは、経済評価や政策評価といったこれまでの議論の深化はもちろん、心理学や行動科学の手法の援用など、より学際的な研究が進む一方で、さまざまなデータベースの整備や、それに基づく指標化、勘定体系の構築など、政策に深く関わるような議論がなされています。

 そこで次号では、「自然資本と生態系」をテーマに、経済・政策分析はもちろん、多角的・学際的な論考を呼びかけます。たとえば、以下のような内容が考えられます。

  • 自然資本と生態系の経済評価:非利用価値や多面的価値を貨幣単位で評価し、費用便益分析などの経済分析を可能にする。
  • 生態系サービスと、生態系ディスサービス:便益をもたらすサービスだけでなく、被害(費用)をもたらすディスサービスについても考察。受益者・負担者の観点からの議論。
  • 生態系サービスに関わる指標や生態勘定の構築:可視化の促進と、データの充実。
  • 自然資本管理(国、企業、個人):各ステークホルダーとの関わりや取り組み。
  • 都市における自然資本と生態系保全、グリーンインフラ:都市化や都市の巨大化過程におけるインフラニーズと自然資本・生態系の調和。自然共生。
  • 発展途上国における自然資本と生態系、経済開発と生態系保全:貧困問題からの脱却と環境保全の両立。
  • 自然資本と生態系保全のための国内的・国際的制度設計:自然資本や生態系の価値を含めた意思決定(主流化)を促す制度設計。
  • 震災対策・防災と自然資本・生態系保全:自然資本を利用した防災施策や、生態系保全。
  • 自然資本・生態系と地球環境問題(地球温暖化、持続可能な発展)の関わり:関連するその他の地球環境問題との総合的議論。

 以上の趣旨を踏まえ、焦点を絞って、ご自身の視点で主張を展開されている学術的な論考を投稿いただきますようお願いします。多角的で学際的な議論を歓迎いたします。

投稿規定

 稿者は環境経済・政策学会会員に限ります(ただし、特に編集委員会が認めた場合は、その限りではない)。ご自身の研究結果を含まなくともかまいませんが、他者の研究結果・データ・主張等を用いる場合は、必ず出所を明確にしてください。また、総説の紹介ではなく、ご自身の視点で主張を展開してください。さまざまな分野の専門家および一般市民を対象としたものであることを念頭に置かれ、高度に専門的な論考はお避けください。

  1. 字数制限は、本文の上限5千字(注釈・参考文献を含む。図表を除く)、また図表の総数を上限4点とします。字数制限は必ずお守り下さい。
  2. 第1ページに、タイトル、名前(邦文および英文)、所属、メール・アドレスおよびゲラ送付先を記入し、論文は第2ページから始めて下さい。英文タイトル、論文要旨、キーワードは不要です。
    記述のスタイルは、『環境経済・政策研究』の投稿規定(http://www.seeps.org/journal/)と同一です。なお、参考文献を引用する際は、該当ページもお示しください。また、文書はMSワードで作成をお願いします。
  3. 投稿は、学会webから行ってください。投稿出来ない場合は、栗山 (kkuri(アットマーク)kais.kyoto-u.ac.jp)まで、メールで送付してください。

締切

2016年6月10日(金)

注意

 投稿された論考は、編集委員会で迅速に採否を決定します。その際、修正を求めることがあります。なお、不採用の場合でも、レフェリー・レポートは特にありませんので、ご了承下さい。