SEEPS 環境経済・政策学会

環境論壇:「化学物質管理への経済・政策学からの貢献」についての投稿の呼びかけ

2017年3月30日

岸本充生
松野 裕(編集委員)
栗山浩一(編集委員長)

 次号(第10巻第2号)の環境論壇のテーマは、「化学物質管理への経済・政策学からの貢献」です。

 化学物質による環境汚染は、20世紀後半に、2つの水俣病、イタイイタイ病、四日市公害など、公害問題として大きな健康被害をもたらしました。その後、環境汚染のレベルはずいぶん改善されましたが、1980年代からは測定・分析技術の進展とともに、微量ではあるものの、多数の化学物質への同時曝露が問題になりました。1990年代には、国際的にも日本においても、リスク・アプローチが導入され、リスク評価に基づいたリスク管理が開始されるとともに、これ以下ならリスクの懸念のないというレベル(閾値)がない発がん性化学物質については、生涯発がん確率10の−5乗のレベルで基準値が設定されました。

 しかし、その後も国内では、アスベスト問題、放射性物質の問題、PM2.5の問題、そして豊洲新市場の地下水汚染の問題など、化学物質リスクに関連するような問題は繰り返し浮上します。これらの問題は、「科学」対「感情」のようなフレーミングで議論されることが多いのですが、実際はそんな単純なものではありません。「排出削減や汚染浄化にどれくらい費用がかかるか」、「どこまで対策をすれば十分なのか」、「誰が、どのような仕組みで、費用を負担するべきか」、「排出削減のインセンティブをどうやって付与するか」、「どこまで、どのような仕組みで被害を補償すべきか」といった、経済や政策に関わる問題は正面から議論されることなく、問題ごとにケースバイケースで対応しているのが現状です。

 そこで次号の環境論壇では、大気汚染、水質汚染、土壌汚染、食品汚染など、化学物質に起因する諸問題について、環境経済・政策学の視点から議論を行いたいと思います。具体的な問題を取り上げていただいてもよいですし、一般論を展開していただいても構いません。例えば、以下のような問題に関する議論が考えられます。

  • 化学物質管理における政策ツールを再考する(自主的取り組みやナッジ(行動科学の知見を活用して人々あるいは事業者の行動変容を引き起こす手法)を含め)
  • 化学物質問題における「対策費用」の位置づけを明確にする
  • 化学物質問題における「安全」と「安心」の位置づけを明確にする
  • ポスト3.11におけるリスクコミュニケーションのあり方を論じる
  • 化学物質管理を支えるレギュラトリーサイエンスのあり方を論じる
  • 化学物質の環境基準値策定プロセスを提案する
  • 化学物質管理における「予防原則(precautionary principle)」のあり方を再考する
  • 日本の化審法や化管法(PRTR制度)のあり方を提案する(欧州REACH規則や米国TSCA改正を受けて)
  • 化学物質曝露と健康被害との因果関係が必ずしもはっきりと特定されない場合の補償のあり方を検討する
  • 自然災害や産業事故などによる化学物質の漏洩・火災・爆発への対策はどうあるべきか検討する
  • 持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)実施計画における「予防的取組方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成する」とのいわゆるWSSD2020年目標、持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDG)の「3.9  2030 年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる」の達成に向けた提案を行う

 以上の趣旨を踏まえ、テーマ案も参考にしたうえで、焦点が絞られ、また、ご自身の視点で主張を展開されている学術的な論考を投稿いただきますようお願いします。多角的で学際的な議論を歓迎いたします。

投稿規定

 投稿者は環境経済・政策学会会員に限ります(ただし、特に編集委員会が認めた場合は、その限りではありません)。ご自身の研究結果を含まなくともかまいませんが、他者の研究結果・データ・主張等を用いる場合は、必ず出所を明確にしてください。また、現地調査報告、時事解説、総説の紹介ではなく、学術研究を踏まえ、ご自身の視点で主張を展開されてください。さまざまな分野の専門家および一般市民を対象としたものであることを念頭に置かれ、高度に専門的な論考はお避けください。

  1. 字数制限は、本文の上限5千字(注釈・参考文献を含む。図表を除く)、また図表の総数を上限4点とします。字数制限は必ずお守り下さい。
  2. 第1ページに、タイトル、名前(邦文および英文)、所属、メール・アドレスおよびゲラ送付先を記入し、論文は第2ページから始めて下さい。英文タイトル、論文要旨、キーワードは不要です。
    記述のスタイルは、『環境経済・政策研究』の投稿規定(http://www.seeps.org/journal/)と同一です。なお、参考文献を引用する際は、該当ページもお示しください。また、文書はMSワードで作成をお願いします。
  3. 投稿は、学会webから行ってください。投稿出来ない場合は、栗山 (kkuri(アットマーク)kais.kyoto-u.ac.jp)まで、メールで送付してください。

締切

2017年6月9日(金)

注意

 投稿された論考は、編集委員会で迅速に採否を決定します。その際、修正を求めることがあります。なお、不採用の場合でも、レフェリー・レポートは特にありませんので、ご了承下さい。